女子力高めなはずなのに
高卒で働いて小さい妹を育て上げ、その元凶となった父親さえも受け入れて面倒をみているなんて。妹に対する贖罪の意識だけでできることではないだろう。

元々持ち合わせた度量の広さと言うべきか。あの兄貴もヤツなりに色々悩んで、辿り着いた道だったのか。

そういえば、結局俺は父親と兄貴、両方に「さくらさんをください」と挨拶に行った。

父親は最初から最後まで何も言わず、兄貴は面白くなさそうではあったものの「よろしく頼むよ」と握手を求めてきた。目が笑っていない笑顔で、握り潰すように力の入った握手だったけど。

「さくらが幸せに笑ってるだけで、俺は十分なんだ。だから、あいつを幸せにしてやってくれ」

「それはもちろん」

「ただし、さくらを泣かせるようなことがあったら、マジ殺すから」

……本気ですね?お兄さん。そんな死んだ魚みたいな目で睨まないでいただきたい。

「それは、もちろん……」

「怖いならやめてもいいんだぜ?」

「そんな中途半端な覚悟でご挨拶には伺いませんよ」

兄貴はニヤッと笑って、渾身の力で俺の肩をバシッと叩いた。これは気合いですか?嫌がらせですか?

きっと両方だな。
大事な妹を嫁にもらうんだから、そのくらいは許してやるか。

さくらの家族にはそんな予想通りの挨拶を済ませてあった。問題は俺の方だ。
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