キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
その週の水曜日と木曜日、野田さんちには灯りがついていたけど、金曜日からは灯りがついていなかった。
ということは、仕事に行ってるんだろう。
今度はどの事件?
どれくらい危険なの・・・?

つい野田さんのことを考えてしまう私って、やっぱり・・・好きなんだ。
だって、自分が住みたい海辺のおうちにも、こういう暮らしがしたいと思うこと全て、そこにはいつも野田さんがいるんだもん。

私・・・変わりたい。
自分の人生の脇役ばかり演じていた、今までの自分にさよならして、自分の人生の主役を演じて生きたい。
私・・・野田さんと一緒に暮らしたい。
私のことを一人の女性として見てくれる人と、ずっと恋をしたい。
くすんでいた自分に、輝きを取り戻したい。

結局、職場まで車で送ってくれたのを最後に、10日間野田さんと会うことはなかった。
電話だって一度もかかってこなかったし、私も電話をかけないまま、2月14日のバレンタインデーを迎えた。

午前中から会ってくれたなつきちゃんと一緒に、美容室へ行った私は、髪を短く切ってもらった。
それだけで、そろってなかった左右の違いがなくなり、洗練されたオシャレさんに変身できた。

でも、変身作戦はまだ始まったばかり。
まだまだ作戦は続く!

「私が思う“オシャレ”って、自分を構うことだと思う。自分を労わって、気分よくさせて。だからそういう環境に身を置いたり、気分が上がる服着たり、メイクしたり、ヘアアレンジするの。その場を楽しむ・・・うん。やっぱり聖さんって、甘いピンク系より、洗練された赤系の方が断然似合う!」となつきちゃんは言うと、赤いリップグロスを私の目の前に差し出した。

「アイメイクをあまりしないなら、赤いリップグロスを塗って、唇を艶やかに魅せる。逆に、きっちりアイメイクを施す場合は、口紅をつけてみて。聖さんは普段、きっちりとメイクしないんだよね?」
「うん・・」
「じゃあグロスを普段使いにしたほうがいいんじゃないかなぁ。これね、いわゆる自然派コスメで、唇が荒れないって評判高いの。愛用してる女優さんも結構いるよー」
「そうなんだ。これね、雑誌で見ていいなーと思ってたのよ」

私は美容通のなつきちゃんに勧められたグロスの他に、同じメーカーのチークとファンデも買った。
浮かない色を選ばないよう、なつきちゃんに見立ててもらった。

次は服。
「聖さんは、ピタッとしたパンツに、おしりが隠れるくらいの長さのシャツとかカットソーってスタイルが似合う」となつきちゃんに言われた私は、なつきちゃんに勧められるまま、黒と濃紺のスキニージーンズや、丈の長い白いブラウスとからし色のタートルネックセーターを買った。

そういえば、ノートに切り取った好きなファッションスタイルも、こんな感じが多かった気がすると思いながら、久しぶりに下着も新調した。
後は靴とバッグだけど・・・来月のお給料が入ってから検討しよう。

最後にマグカップを2つ買って、私たちはデパートを出ると、フォンダンショコラを作るため、なつきちゃんのお友だちのエリちゃん宅へと向かった。

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