晴れ女
肩を抱かれて車に乗ると、何も言わずに走り出した。


落ち着きを取り戻し、ハンカチで顔を拭くと、横から箱に入ったティッシュがヌッと差し出され……


「使って?」


優しく笑う慎吾に、素直に従い、


「ありがとう」


と鼻声で返し、鼻をかんだ。



――後。


「あ。このティッシュ、コイツの後処理ティッシュだ」


運転している人を指さし言い放った。


「は?何それ!」


思わず顔をしかめて口から漏れる。


慎吾を見るとケラケラ笑っていて、運転している人に視線を移すと、


「ち、違う!!違うから!大丈夫!それは大丈夫!処理ティッシュは助手席足元にある!」

「うわっ!汚っ!」



助手席に座っているのは最初私に話しかけて来た人。

大袈裟なリアクションで靴を脱ぎ捨てシートに飛び乗った。
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