晴れ女
バタンと再び車の扉が閉まる音がする。

こちらに近付いてくる靴の音。


俯く私の前にピタリと止まると、



「乗らないの?」

「……乗らないっ」


いつものイタズラな声。



「ナンパのふりしてごめんね?」

「最低……っ」


顔を上げればきっと笑ってるんだ。

――私を安心させる為、でしょう?




その時……私の体をギュッと温もりが包んだ。




「泣かないでよ……陽菜ちゃん」


「バカ慎吾……」




視界が暗くなり、顔を隠さず泣いた。

けれどそれは先ほどとは違い、安心したからなのかもしれない。と……

心の奥で確かに感じた。
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