むせかえるよな倉庫の片隅で


ほこりっぽい、一日いたら鼻の中が真っ黒になってしまう倉庫の中。


ココナッツ、ラベンダー、ムスク、ジャスミン

サンダルウッド、バニラ、ベルガモット


まるで異世界の花園のような、香りの花束の中を進む。


「あ、あれ……?あれだ!」


すると、お香の棚の向かいの壁につけられた棚の上段、少しだけ空いたスペースに、ライターのオイルが入った段ボールがねじこまれていたのを発見。


それは私の身長よりも、少しだけ高いところにある。


脚立があった方がいいけど……見当たらない。


今さら遠くから運んでくるのも面倒くさいし、運ぶ間にいつもすねをぶつけて、痛い思いをするし。


手を伸ばせば触れるそれを、ポケットから取り出した軍手をはめてちょっとだけ動かす。


けれど、むりやり詰め込まれたそれは、他の箱に邪魔され、なかなか動かない。


「はあ……やっぱ脚立がいるかな」


深く息をつくと、次の呼吸の瞬間、鼻の中にぐちゃぐちゃにブレンドされたお香の匂いが充満する。


大学生の時は好きだった、強い香り。


一人暮らしをしていたアパートでお香にハマったのがきっかけで、雑貨関係の会社を片っ端から受けたけど、ぜーんぶ落ちた。


最後に引っかかったのが、ぎりぎりお香に関わっていた運送会社経営のこの倉庫。


そこでだらだらと事務員を続けて、気づけばもう27歳。


当然こんなところで、素敵な出会いがあるわけない。


いるのはリフトのおじさんと、西郷さんと、威圧感満載のセンター長くらいだし。


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