裏腹王子は目覚めのキスを
「早速だけど、どうだったかな? このあいだの面接の結果」
わたしがいきなり尋ねると、健太郎くんはハンカチで額の汗をぬぐいながら、小さな瞳をゆっくりとわたしに据えた。
「うん、ダメだったよ」
表情を変えずに言われて、重いため息が丸テーブルに沈む。
「わたしって……本当にダメな人間だね……」
力なくつぶやいて、うなだれた。
もともと自分のことをできない人間だとは思っていたけれど、ここまで来ると嫌でも自覚せざるを得ない。
仕事を探し始めてから三ヶ月。
立て続けに面接に落ちれば、トーゴくんのおかげで取り戻しかけた自信も木っ端微塵だ。
オフィス街ということもあって、店内でコーヒーを飲んでいる人たちはほとんどが仕事帰りのビジネスマンだ。
疲れた顔の若いサラリーマンやファッション雑誌にそのまま出てきそうな仕事ができる風の格好をした女の人。
右隣で清楚なオフィスカジュアルに身を包み、さっきからずっと上司の悪口を言い合っている女性ふたり組も、今は女子トークに夢中だけど昼間は会社で不満を押しこめて懸命に働いているに違いない。
仕事をしている人たち特有の充実感が、明るい店内にひしめいている。
そんな中で、わたしはひとりだけ照明に照らされていないような、ひどく場違いなところに放り込まれてしまったみたいな、言いようのない孤独感にじわじわと蝕まれる。