裏腹王子は目覚めのキスを
『でもとりあえず旅行は行くわけね。で、どこかいいビーチリゾートはないかと』
「うん……」
プロポーズを断る理由がはっきりと見つからないなら、旅行を断る理由だってないのだ。
今わたしが結婚することに対してしっくりいってなくても、時間は待ってはくれない。
もう一ヶ月前だし、早く旅行先を決めないと、健太郎くんが指定した日程で予定を立てられなくなってしまう。
「みのりちゃんが東南アジアは安いって言ってたでしょ? だからどこか安くていいビーチリゾートを知ってるんじゃないかなって。正直旅行に行くお金自体も結構きついんだけどね」
なにせわたしはもう一年半も職ナシなのだ。
実家やトーゴくんのマンションに住まわせてもらっているおかげで家賃はそんなにかからないけれど、それでも日用品やらなにやらと細々と出費は嵩んでいる。
『ていうか、そういう場合って、彼氏が旅行代金払ってくれてもいいのにな……あ、みのりが“ビンタン島”はどうかって』
「え? みのりちゃんそこにいるの?」
『うん。送ろうと思ってちょうど車乗ったとこだったから』
わたしは実家のワンボックスカーに並んで座る弟たちの姿を想像した。
みのりちゃんは助手席に座って桜太の電話が終わるのを待っているのかもしれない。
「わ、ごめん。長話してる場合じゃないね」
『いや、みのりも姉ちゃんの話聞きたいって言ってるし。で、ビンタン島だけど、下手なリゾートより値段も手頃だし、まだそこまで知られてない場所だから、人が少なくてくつろげる穴場だってさ』