裏腹王子は目覚めのキスを
わたしが借りている部屋はとなりの六畳の洋間だ。
真ん中に簡易ベッドを広げると、左右に積み上げられた段ボール箱がまるで城壁のような圧迫感を発揮する。
上の段に積まれた箱の中身はすべて洋服らしく、万が一崩れても安全だ、というのがトーゴくんの持論だ。
わたしが簡易ベッドを広げたことで隅に追いやられたシャツの群れは、彼がここ数週間のために買った着替え用のストックらしい。
仕事が忙しくなる前は、一度着たシャツはクリーニングに出していたようだけど、ここ最近、クリーニングに出す時間も受け取りに行く時間もなくなってしまい、買ったほうが早い、と仕方がなく毎日新品に袖を通しているのだとか。
洗濯されずに溜まっているシャツは二十着近い。忙しい分、給料もいいのかもしれないけれど、恐ろしく不経済な気がする。
「明日は洗濯とアイロンかけもしなきゃ」
心に決めて布団にもぐりこんだ。
今のこのトーゴくんの家は、人を拒絶してる状態だ。
わたしも一人暮らしをしていたから分かる。