裏腹王子は目覚めのキスを

あの日、調子に乗って普段あまり飲まないお酒を飲みすぎたわたしは途中で記憶を失い、気がついたのは翌朝、いつものベッドの上でだった。

トーゴくんが連れ帰ってきてくれたらしいのだけど、へべれけのわたしはよっぽど彼に迷惑をかけたのか、「お前はもう酒を飲むな」と一方的な禁止令を出されてしまっていた。
 
外で酔っ払って正体をなくすなんて、みっともない。
お酒で羽目を外すことがなかったわたしは、アルコールで記憶をなくしたこともなかったから、自分でもショックだった。

 
テーブルに朝食を並べると、出かける支度を済ませたトーゴくんが大人しく席に着く。
 
朝のニュースで時間を確認しながら、黙々と箸を進めていた彼が、ふと顔を上げた。

「羽華。明日は休めると思うから、出かけたい場所あったら決めとけよ」

「え、ああ……うん」
 
土曜日にどこかに出かけようっていう話、本気だったんだ……。 
 
ちょっと驚きながらも、気持ちは高揚をはじめていた。
トーゴくんと出かけるなんてはじめてだから、なんだかちょっと嬉しい。



出勤していく彼を見送ってから、わたしはソファにもたれて携帯を操作した。
都心の情報を次々と目で追っていく。

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