裏腹王子は目覚めのキスを
「うん、やっぱり、無職の期間があると厳しいのかな」
「そうだな……でも、羽華子の場合はそこまで極端に不利にはならないと思う」
赤ペンをさらさらと走らせながら、こちらを見る。
丸い輪郭に耳は大きくて、髭を剃ったあとはうっすらと青みがかっている。
極端に薄い唇に、りんごにナイフで切れ目を入れたような小さな目。
パーツそれぞれに特徴のある個性的な顔は、きっと一度見たら忘れない。
「やっぱり営業職で探してる?」
「あ、ううん、ブランクがあるし、体調面もまだ心配だから、まだしっかり働ける自信がなくて」
できれば簡単な入力業務や短時間勤務が理想だと言うと、健太郎くんは「ふうん」とさらに用紙に書き込んだ。
「勤務地の希望は?」
「ドア・ツー・ドアで一時間以内が理想かな」
トーゴくんのマンションは立地がいいから、都内ならだいたいどこへ出るにも一時間とかからないはずだ。
「そういえば、今どこに住んで……T区? ひとり暮らし?」
プロフィールを見返して、健太郎くんは少し驚いたようだった。
トーゴくんが住んでいる場所は、わたしみたいな無職の人間が住めるような地域じゃない。
「ええと、その、幼なじみの家に居候してて……仕事が決まったら出ていこうと思ってるんだけど」
「そう」
あっさりと相槌を打つ。そんな気はしてたけど、健太郎くんはそれ以上なにも追求してこなかった。