絶対零度の鍵
ヒーロー








―騙された

違う、そんな言葉は適切じゃない。

―嵌められた

うん。こっちの方が合う。ぴったりだ。僕の今の状況に。




「卓!あんたったら、ほんとに今頃起きてきて!早くごはん食べなさい!」


二階から降りてくると浴びせられるいつもの台詞。

それに加えて―

眠気でぼうっとする頭をはっきりさせるのには十分な朝の光景。


「右京ちゃんはもうすっかり準備ができているっていうのに。転入初日で遅刻させんじゃないわよ!」


おかんは、新品の制服を身に纏い、ずずっとお茶を啜る美少女をびしっと指差した。



「いい…朝飯、今日いらない…」


げんなりしながら、断る。


だって、食欲がわかない。


しかし次の瞬間丸められた新聞紙でパコンと頭を叩かれて、


「黙って食べる!」


怒られた。


絶対どっかで歯車が噛みあっていない気がするのだけれど。

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