【短編】5℃。
アメフト男の隣に可愛い同期が並ぶ姿が脳裏に浮かんでは、消えた。
*─*─*
翌朝。
「……ふわぁ~」
何故か寝付けかった私は、しかも夜明け前に目が覚めて、やることもなかったので早くに出勤した。吉田の夢を見て、同期が告白するシーンで目が覚めて、ウトウトしてはまた夢を見る……その繰り返しだった。
誰もいないオフィス、壁の寒暖計は5℃を指していた。寒い。壁のエアコンのスイッチを入れようと指を伸ばした。ガタン。後ろでドアが閉まる音がした。振り返る。
「お、理香、早いじゃん。オッハー♪」
いたのは、吉田だった。黒いコートを着ている吉田はまるで熊そのものだ。
「古」
「何、俺の誕生日で早朝出勤?」
吉田は私のところに来ると、手を差し出した。
「俺にプレゼント渡すのに早く来たんだろ」
「……バカ」
「バカあぁぁぁ??」
「そう、バカ」
私の前に伸びていた吉田の手は突如、動いて、私の顔の横を掠めた……ドン! 私は壁に押し付けられて、目の前には吉田の顔。つまり壁ドン。
「何するの」
「見りゃ分かるだろ、壁ドン。俺の誕生日プレゼント無いって、どーゆーこと??」
「そーゆーこと」
平然と私は答えたけれど、本当はものすごく動揺していた。心臓はバクバクするし、顔は熱くなるし、胸は痛くなるし。それは、人生4度目の壁ドンもロクな理由でなかったことにガッカリしたからだ、と思った。
*─*─*
翌朝。
「……ふわぁ~」
何故か寝付けかった私は、しかも夜明け前に目が覚めて、やることもなかったので早くに出勤した。吉田の夢を見て、同期が告白するシーンで目が覚めて、ウトウトしてはまた夢を見る……その繰り返しだった。
誰もいないオフィス、壁の寒暖計は5℃を指していた。寒い。壁のエアコンのスイッチを入れようと指を伸ばした。ガタン。後ろでドアが閉まる音がした。振り返る。
「お、理香、早いじゃん。オッハー♪」
いたのは、吉田だった。黒いコートを着ている吉田はまるで熊そのものだ。
「古」
「何、俺の誕生日で早朝出勤?」
吉田は私のところに来ると、手を差し出した。
「俺にプレゼント渡すのに早く来たんだろ」
「……バカ」
「バカあぁぁぁ??」
「そう、バカ」
私の前に伸びていた吉田の手は突如、動いて、私の顔の横を掠めた……ドン! 私は壁に押し付けられて、目の前には吉田の顔。つまり壁ドン。
「何するの」
「見りゃ分かるだろ、壁ドン。俺の誕生日プレゼント無いって、どーゆーこと??」
「そーゆーこと」
平然と私は答えたけれど、本当はものすごく動揺していた。心臓はバクバクするし、顔は熱くなるし、胸は痛くなるし。それは、人生4度目の壁ドンもロクな理由でなかったことにガッカリしたからだ、と思った。