悪魔とドレイの聖夜の話。
これは決して私がドМでドレイ体質なのが原因という訳ではない。
強い口調で命令されると少しばかりキュンとしてしまうとか、何ならもっと強くてもとか、見下すようなその視線が堪らないですご馳走様ですッとか、そういう訳では。決して。
……。
話を元に戻そう。
そんな二重人格腹黒王子な悪魔に呼び出され、私は彼の家に向かう最中なのだ。
よりによってこんな日に。
休日とクリスマスが重なるこんな日に。
とは言え、悪魔もこんな日に風邪を引いたというので、ざまあ見さらせとほんの少し爽快な気分である。
ウィルスにやられて存分に苦しむがいい。
***
「……着いた……」
よろよろと歩きに歩いて、駅から10分。
メールに添付されていた地図の目的地に辿り着くと、そこには大きなマンションがそびえていた。
少なくとも私の木造1LDKより遥かに立派だ。
オートロックの玄関で、部屋番号を押して呼び出しをすると、ガラガラ声の悪魔が不機嫌に応答した。
「おっせぇよ、早く来い」
すみません、と言い終える前にインターフォンを切られた。