極妻
「大倭会!?なあ今、大倭会若頭が来てるて言うた!?」


廊下から聞こえたその言葉が気になって、部屋の戸を開けてると、そこで掃除中だったふたりの女中さんが驚いた顔で私をみた。


「小夜子様、すみま…」


「なぁホンマ!?ホンマに今、尊兄ちゃんが来てるん!?」


ふたりは掃除の手を止めて、気まずそうに見つめ合った。


「それが……さっき他の者が噂してるのを聞いただけなので、よくは分かりませんが…」


「なんでも関西の方からお見になったお客様が、目を疑うほど素敵な御方で…」


「た、尊兄ちゃんやなっ!?」


「おそらく。大倭会の方だそうなので。けれどすでにお帰りになられたそうですよ」


「え!?帰った!?」


申し訳なさそうに言う女中さん。私は上がった分、がっかりした。


兄ちゃん。私が嫁いで初めてここに来てくれたのに、顔も見んで帰ってしまったん!?


そんな。ほな誰に何の用やったんやろ……?


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