薬指の秘密
「そうだ。今日は一緒じゃないのか」

しるふの周囲をくるりと見回す山岸に

「黒崎海斗先生?」

「そう。医院長が不在だから出来れば一度ちゃんと話をって思ってるんだけど」

どうも捕まらなくて

「今内科の先生のところに行ってるけど。たぶん捕まらないと思うよ」

なにせ海斗はそういう嗅覚だけは犬以上だ

隣で莉彩が苦笑いをしている

「だよな。いつも忙しそうで」

と平和な山岸である

「まあ、また出直すかな。とそうだ、22日忘れるなよ」

念を押すようにしるふに言って、じゃ、と軽やかに去っていく

「……昔からあんななの」

山岸の背が人ごみに消えるころ、口を開いたのは、莉彩だ

「うん。明るく誰とでも打ち解けられるクラスのムードメーカー的な」

「ふーん。黒崎先生といる時にも会ったんだ」

止まっていた足を進め始める

「こないだね」

「黒崎先生なんて?」

「なんてって。何にも?」

同級生って聞かれただけ
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