薬指の秘密
「言葉の節々に黒崎先生大好きですって言われてたらそりゃ不安にもならないわよ」

海斗が恐れているのは、この真っ白な花が離れて行くことじゃない

近づいてきた男たちに傷つけられることだ

無断で踏みにじられること

「まあ、確かに少しばっかり一般論とはずれてることは認めるけどね」

でも、それだけしるふのことを想って

しるふという人間を信じているということなのではないかと

それは実はすごく幸せなことなのではないかと

そう、思うのだ

「まあ、さっさと断って事後報告でもいいから黒崎先生に言うことね」

あとで怒られても知らないわ

「…頑張ります」

ため息とともに思い出すのは、きっと驚愕なんて通り越して不機嫌に細まるであろう

あの漆黒の瞳

無言が何よりも怖いと時間を重ねるほど思う

言いたいことが手に取るようにわかるからあの沈黙は絶対に目を合わせちゃいけない


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