薬指の秘密
「一回しか言わないからね。聞き返されたって言い直したりしないから」

海斗の前で何回も口に出せるほど自分心臓の毛は太くない

「いい?いくよ。山岸君に…告白されました」

「あ?」

濁点が付いていた、気がした

さりげなくテーブルを盾にしつつ、

「一度しか言わないって言った」

若干涙目なのは、やっぱり海斗の調教のせいだ

流れる沈黙

視線を外したのは海斗だ

盛大なため息とともに背もたれに深々と体重を預ける

「本当、期待を裏切らないよな」

期待じゃない、予想か

「まあ、この間の飲み会の後から様子が変だったし、なんとなく予想はした。それに何かやらかすとすればあの山…」

「岸」

「だけかなと」

ぺらぺらと雑誌のページをめくる音が響く

「第一黒崎病院であった時点でわかることだし、勘付くことだし。飯田ですら気がついてたっていうのに」

あの人懐っこい笑顔の同級生、要注意ですね

とカルテをナースステーションに届けに行ったときに言われた

しるふは全く気がついてないようでしたけどね

と付け加えられた言葉にやっぱりか、と肩を落とした
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