薬指の秘密
「だから同窓会迎えに行ったのに」

直接じゃなくても良い、風のうわさ程度でも彼氏がいるのだと伝われば、良いけん制になると踏んだのに

「最近のガキは」

いい度胸をしている

放り出した雑誌がテーブルとぶつかっていい音をたてる

「で、お前は何をやらかしたんだ」

ガキって3つしか違わないじゃないか

と声には決して出さずに思っていると、少しだけ低くなった海斗の声

向けられた漆黒の瞳に、一瞬息を呑む

「何って、何もしてないよ」

ただ告白されたっていう、それ以上でもそれ以下でも

「あほか。どんなに身の程知らずでも玉砕確実で告白なんてするか」

何かしらの可能性が見いだせなければそんなことするわけがない

ましてや同級生というまた顔を合わせるかも知れない仲で

「あほ言わないで。私はただ…!!」

ただ、指輪を眺めていただけ

きっと買ってくれることはないんじゃないかと言っただけ

だって、海斗は誰よりも束縛を嫌う人で

自由人で、マイペースで

嫌々買ってもらったってこれっぽっちもうれしくなんてないから

そんな想い出いらないから

それだったら夢のまま、ほんの少しの切なさと一緒に過去にした方がいいと思ったから
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