薬指の秘密
隣で知らぬ存ぜんと立っている海斗を振り返る

「右手?」

なんで

と言いながら差し出してくれるところ海斗もしるふに調教されている

「これペアなの。海斗もはめないと意味ないでしょ」

そう言って引っ張った海斗の手は男の割には指が長くてきれいだとしるふは思っている

「ここのブランドね、男物はペアでしか作ってないんだよ」

だから特別なの

「へえ」

だから買うとしたらここと決めていた

この指輪に込められ意味を分かる人だけでいい

とっても意味のあるけん制だから

海斗の指にぴったりとはまるそれに小さく瞳を細める

「ねえ、イニシャルも入れたいな」

伺う様に見上げれば、無言で同意する漆黒の瞳

いつものように涼しげな瞳だけれど、そこに拒絶も拒否もないことは

自分が一番よくわかっている

見えづらい海斗の優しさも
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