薬指の秘密
夕日がビルとビルの間を縫って差し込めている

人通りの少なくなった道を歩く脚は、軽くステップを踏んでいる

「海斗ー」

早くー

少し距離のできた海斗を止まって待つ

「上機嫌だな」

この寒い中

「寒くてそこまでテンションが下がるのは海斗だけですー」

そういえば、また失敗した、海斗体重増量作戦

追い付けば15㎝ほどの身長差

それがしるふにはうれしい

「あの指輪ずっと欲しかったんだ。でも海斗買ってくれないと思ってたからさ」

それで見てたら山岸君に自分だったら指輪でもネックレスでも買ってやるよ、なんて

言われちゃったんだよね

もちろんあの後丁重にお断りしたけど

やっぱりね、と笑った彼は、でも後悔はない

隣に居てほしいのは、この先も一人だから

「心外だな。俺はそこまで甲斐性がないわけじゃない」

むしろ甲斐性の面でみれば右に出る者はいない気がする
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