薬指の秘密
寝返りを打ってその後を追うとベットに肘をついて頭を支えた海斗の静かな瞳

「しるふに足りないのは、俺の女だって自覚」

ベットシーツの上に散らばった髪を一房もてあそんでいく

「…ええっと…」

衝撃が強すぎてなんと反応すればいいのかわからない

「よく覚えておけよ。別にどんなに鈍感だろうが天然だろうが構わないが、俺の女だってことは変わらない」

聞き間違いじゃないだろうか

明日槍が降るんじゃないだろうか

海斗の口からこんな言葉が聞けるなんて

「嫌でも思い出すだろう」

指輪がはまっていれば

「…別に指輪じゃなくったって良かったと思うよ」

ブレスレットとかペンダントとかさ

うれしさを素直に口に出せないのは、生まれ持った性状だろうか

「わかりやすいだろう、はたから見ても」

なかなかファッションとして右手の薬指に指輪をはめている人はいない

そこにはほぼ確実に送り主の影があって

それだけでいいけん制になる

「それに好きだろう、こういうの」

実は
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