薬指の秘密
「…海斗、らしくない」

「うるさい」

らしいとからしくないとか言ってる場合ではないのだ

「しるふが言ったんだろう、俺に独占欲があればどうのこうのと」

実践しただけだ

「…ますますらしくない」

やっぱり頭打ってない?

「そろそろ黙れ。襲うぞ」

「…待った!それは勘弁!」

かかってきた体重と見下ろしてきた漆黒の瞳に焦ったのは一瞬で

重なる呼吸は、ゆっくりと時を刻む

「じゃあさ、海斗」

手を伸ばして触れた頬

一カ所だけ冷たい感触に一瞬瞳が細まる

「私が海斗の女なら、海斗は私のものだね」

だって、そこには同じ輝きがあるのだから

裏返せば二つのイニシャルとぴったりと重なる桜の花びら

一つじゃ意味がない

一つだけじゃ形にならないから

だから、しるふなら、

この姫君になら

「当たり前だろう」

捕われたってかまわない

望むのなら捕えよう
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