キスの後で……。
……


…………


…………………



………………………………………………



「あの…さ、怒ってる?」


………………………


あの後、直ぐに居酒屋を出た。


夜道は危ないから送ってくって言う鈴木を無視してひたすら駅へと向かう。


「佐久ちゃん……怒ってる…よね?」


「怒ってないように見える?」


「見えま…………せん……。」


「なんで、あんな事いうのよ。いつ、あんたと私付き合ったのよ!」


目の前でおどおどしながら話す鈴木を見ていると、無性に腹が立ってきて一気に捲し立てる。


「そもそもよ、あんた私に好きだとかって言った?一度もないよね?そんな話。なのに付き合ってるとかって可笑しいよね?そう思わないの?」









「じゃ、好き、だよ…佐久ちゃん?」









「あ〜の〜さぁ〜、じゃって何よ。じゃって。まるで『じゃ、取り敢えず、ビール』みたいになってんじゃないのよ!」


「フフっ…佐久ちゃん面白い事言う、よ……ね……ご、ごめん…。」


私が今、どんな顔になっているのか目の前の鈴木を見ればわかる。


鬼の形相だ。


こうなりゃ、鬼どころか閻魔様になって目の前の身勝手な男を裁いてやろうじゃないのよ。


「大体、私はあんたの事一度だってそういう目で見たことないし、見れない。いつだってのほほんとして、ヘラヘラしてて掴み所ないし、仕事だってやる気あるんだかないんだか適当にやってるようにしか見えないし……そもそも男としての魅力を感じられなーーー」「ちょっと来て」


鈴木にいきなり手を掴まれ脇道へと連れて行かれた。


「離してよ」


「やだ。」


手を振り解こうとするのに全く力が敵わない。


ーーー見た目は華奢なのに、凄い力……


ドンッ


不意に、脇道に続く壁に押し付けられた。


手は繋がれたまま、私の顔横にある。


空いてる手で鈴木の体を押し退けようとするけど、その手も取られ完全に身動きが出来ない。


「ねぇ……何のつもり?いい加減にしてよ、悪ふざけにも程があるわよ。」


口では強がって言うものの、急に、‘’男‘’の顔になった同期をまともに見る事が出来ない。


「ちゃんと、見ろよ俺の事。俺だって男なんだよ。」


そう言いながらグッと顔を近づけてくる。


今まで見た事のない色気を帯びた熱い目で私を捉える鈴木。


ーーー何よ、普段、俺とか言わないクセに……こんな事で流されないんだから


ギッと睨み返すも


「ヤベ……その顔、そそるわ」


完全に鈴木のペースだ。


「ちょ、ちょっと、声、出すわよ。」


「クッ…出せるもんなら出して見なよ……」


そのまま、一気に唇を塞がれた。



















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