【短編】くすんだリング。


振り下ろした手を、私は再び振り上げた。そして束を手放す。


ひら、ひら、ひら。
紙は花吹雪のように通路へ階下の駐車場へと舞い降りる。


「いやあああっ!」


聞こえるのは彼女の悲鳴、見えるのは私の足元でコピーを必死に拾い上げる姿。





*─*─*


……1年後。

彼の薬指からはくすんだリングは消えた。代わりに新品のプラチナが光る、私とお揃いの。


「欲しい」
「楓、この前したばかりだろ?」
「欲しいの」
「疲れてるんだ、週末まで待てよ」


リングをしたその手に振り解かれた。課長と結婚して半年、課長には影ができた……新しい女の子の影。


私は探偵を雇って調べようと思う。そしたら女の子のご両親に証拠を突きつけるつもりだ。


「じゃあ、週末、いっぱいして?」
「分かったよ」


物わかりのいいフリをして、私はベッドに潜った。




(おわり)



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