【短編】くすんだリング。
課長はコトを終えると脱いだ服を身にまとう。頂点を迎えたあとの私は、身体が気怠く、ベッドに横たわったままボンヤリと彼の動きを見ていた。

器用にシャツの袖のボタンを留める左手の薬指には、くすんだプラチナのリング。結婚指輪。


……それは勿論、私とお揃いのリングではない。


「明日、出張でいないけど、頼むよ」
「はい」


私は裸のまま、ベッドの上で返事をした。


「福島課長」
「なんだ」
「来週は……」
「ああ。来るよ」


上着を着ると、福島課長はベッドに腰掛ける。


「楓、愛してる」


そして、そっと私にキスをして部屋を出て行った。

< 2 / 13 >

この作品をシェア

pagetop