好きとは言えない
ドンッと音がした。
な、なに…?
「先生」
私の右手を引っ張った手とは違う田所くんの手は壁についていて、ドンっと音がなったのは壁についた時の音だったんだと知る。
間近にある田所くんの顔。
逸らすように顔を俯かせればボタンをしてないシャツから鎖骨。
ドキドキと心臓が鳴り響く。
「たど、ころくん。何を」
小さく残っていた教師という理性を保ち、声を出す。
私は怒っていると伝えなければいけない…、のに出てきた声は蚊の鳴くような声。
「先生が悪いんだ。俺が待ってって言ってるのに待ってくれないから」
「用紙を、取りにいかせて」
「その前にまず俺の話を聞いてよ。反省文書くからさ」