曖昧な関係の境界線



先輩の淹れたコーヒーを飲みながら、掃除をする先輩から目が離せない。
掃除当番で社員の机を雑巾で拭いている先輩は、今日も金城さんの机だけは無視している。パソコンの横に飾られた奥さんと、産まれて間もないお子さんの写真を直視できないからだ。

ほんの少し前、先輩と金城さんがキスしているところを見てしまった。いつの間に元の関係に戻ったのか。いや、いつ不倫関係になったのか。俺は何も聞かされていない。

彼氏とうまくいっていると同僚に話す先輩が憎らしかった。俺の存在をなかったかのように微笑んで話す先輩に怒りが湧く。
金城さんの代わりで満足していたはずが、それさえも虚しくなった。ベッドでの夢のような時間全てが。

身体を繋げ続ける俺と先輩の関係は何なんだ……。金城さんとよりを戻しているのに、なぜ今でも俺に抱かれるのか……。

日毎に俺の先輩への態度は冷たくなっていった。

「俺と金城さん、どっちが気持ちいいの?」

そう問いながら昨夜は強引に抱いた。やめてと言われても、涙で先輩の顔がぐしゃぐしゃになっても。何度も何度も。好意を一切見せず乱暴に扱った。

俺も頭がおかしくなっているんだ。あんな最低な女、さっさと見限ってしまいたいのに。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



やってしまった……。

残業で遅くなりやっと帰れると思ったが、警備員にエレベーターの鍵を掛けられてしまったらしい。ボタンを押してもエレベーターは動かず、階数表示もずっと1階から動かない。

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