夢の続き
誤解
「お疲れ」


ようやく『地獄の三週間』が終わり、その次の日に僕とシゲさんは打ち上げということでパンチに来ていた。

終わったその日に打ち上げをしないのは、三週間の間に心身ともに疲れ切ってしまい、打ち上げをしたところですぐに終わってしまうからだ。

案の定、昨日は仕事が終わり、帰宅してから晩飯も食べずにシャワーだけ浴びて寝てしまった。

小学生でも布団に入らないような、八時という時間に僕は深い眠りに入った。


「今年は特に忙しかったな」


大きなため息をつくシゲさんに、どこかいつもとは違う感じがする。

服装は仕事なのでいつも通りスーツだし、時計も新しくしたわけでもなく使い回しにしているもの・・・


「あっ」


その違和感は彼が身につけているものではなく、手に持っている物の中身にあることに気付き、思わず声を出す。

それに不思議そうな表情でこちらを覗いてくるが、僕にとってはその中身のほうが不思議だった。


「シゲさん、今日は珍しくお茶なんですね」


彼のジョッキを指差し、改めて僕のジョッキの中身を確認する。

そこには黄金の比率とも言われる七対三よりも、泡が若干少なめのビールが美味しそうに入っている。

七、五対二、五こそが本当の黄金の比率だと、最初の頃によくおじちゃんが言っていた通りの比率だった。
< 127 / 132 >

この作品をシェア

pagetop