それは…好きだから。(彩佳side)
「いつもの場所で待っているから」

 そう言い残して彼は去っていった。

 樹生の後ろ姿が見えなくなると、崩れるようにズルズルと床に座り込む。

 嵐が去った後みたい。

 わたしは「はあ」と肩で息をして、震えている自分の手を見つめた。

 よかった。この手はまだ樹生と繋がっている。

『俺、彼女と三か月以上続いたことがないんだ。なぜだか、すぐに振られるんだよ』

 つきあう前に樹生がポツリと零した言葉。
 
 彼はその本当の理由を知らない。


 わたしは……自分から手を離さないって決めたから。



 立ち上がると、気持ちを切り替えるように大きく深呼吸をした。




 待ち合わせは会社近くの目立たない小さなカフェ前。
 彼はいつだってわたしより早い。今日こそはわたしが彼を待つ番。


「よし。まずは仕事を定時前に終わらせなきゃ」

 気合を入れるために、小さくガッツポーズをして、
 わたしは急いでエレベーターに乗り込んだ。
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