それは…好きだから。(彩佳side)
「俺は定時にあがるけど、彩佳は?」

 約束通り会ってくれるみたい。よかった。

「わたしも。今日中に仕上げる書類をすませれば終われるから」

「今日はうちごはんにしよう。久しぶりに彩佳の手料理が食べたい」

 うちごはん。わたしは出かけるよりも人目を気にすることなく、
 ゆっくり過ごせる家の方が好きだった。

「うん。リクエストはある?」

「そうだな。すぐには思いつかないから考えとく」

 樹生はいつも美味しいって食べてくれるし、おかげでレパートリーも少しずつ増えてきている。
 作ったことのない料理なら、ネットで検索して挑戦してみるのもいい。

「じゃあ、帰りにスーパーに寄っていい?」

 近くに二十四時間営業の大型スーパーがあるから、何かを切らしてもすぐに買いに行けるせいか、
 食材の買い置きはあまりしていない。

 それに樹生と一緒に買い物をするのは楽しい。

 次から次へと手に取って野菜の新鮮さを真剣に吟味している姿って、
 微笑ましくていつも笑みを誘われる。
 とても幸せな時間。

「OK。いいよ。それと今夜は泊っていくから」

「あの……今日は、平日だけど……?」

 泊まっていくって……えっ? 週末だけのはずなのに。
 今までにないことにわたしは目をぱちくりとさせる。
 戸惑っているわたしの顔に、見る間に影が落ちて樹生の唇が重なった。

「この続き、今夜しよう」

 甘い吐息と甘い囁きが耳の奥に響いて、体温が一気に上昇した。

 今、わたしは真っ赤になっているに違いない。

 今日の樹生はとても大胆で、わたしをドキドキさせる。
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