星に願いを~たくさんの幸せをありがとう~
嘘と笑顔と涙



~蒼 side~



夏祭りが終わってから―


美姫とはあれから会ってない。


仕事が忙しいわけではなかったけど
教師が何回もお見舞いに来てたら
怪しまれるかもしれないし…

五十嵐たちはわかってるから問題ないけど

病院には五十嵐先生や五十嵐の母親もいるし

何より美姫に迷惑をかけたくない。

だから会いには行かなかったけど
電話やメールは毎日してた。



そして夏休みが終わり

今日から2学期が始まる。


詩織『せんせー!おっはよ~~!!』


廊下を歩いていると後ろから松本が突進してきた。


蒼『おはよう。』


松本の後ろにいる美姫に話しかけた。


美姫『おはよ。』


恥ずかしいのか小声でハニカミながら答える美姫。

たった一週間会ってなかっただけなのに
顔をみただけでこんなに嬉しいなんて…
俺、どうかしてんのかな…。


少し話して美姫たちとはそこでわかれた。

今日は始業式と夏休みの宿題を回収する
だけだから生徒は午前で下校できる。

全部終わり生徒は帰り始めているとき


蒔田『紺野先生今いいですか?』


蒔田先生が保健室に入ってきた。


蒼『なにかありましたか?』

蒔田『あの…校長先生が呼んでいるんですけど…』


え…?

校長先生が?


蒼『わかりました。今から行ってきます。』


何の話かわからないけど
とりあえず行ってみるか。

…いい話ではなさそうだけど。


コンコン


緊張して固まっている手で校長室のドアをノックし


『どうぞ。入りなさい。』


と返事がしたので


蒼『失礼します。』


中に入ると


校長『わざわざ悪かったね。
少しお聞きしたい事があるんだが…いいかね?』

蒼『はい。』


この学校の校長はいつも笑顔で
優しくて教師と生徒からの人望もあつい…

そう…「理想のおじいちゃん」みたいな感じ。


校長『実はここ数日匿名で変な電話やFAXが来ててね…
紺野先生と2年の桜空さんが
恋愛関係にあるって内容なんだけど…』


…!?

俺たちの事…バレた…?


校長『そこらへんはどうなのかな?』


そこらへんはって…

「はい。付き合ってます。」

なんて言えるわけないだろ。

大体付き合ってるのがバレたら
俺はクビか異動
美姫も退学になるだろうし…

だから…


蒼『そんな事実はありません。
桜空は病気の事があって保健室によく来て
話すことも多いですが校長が思ってるような事はありません。』

校長『本当だね?』

蒼『はい。』

校長『…紺野先生を信じてない訳ではないが
桜空さんにも話を聞いてみていいかな?』

蒼『はい。』


そういって校長は他の先生に美姫を呼ぶように指示した。

大丈夫かな。

美姫…嘘へただから…

美姫が来るまでの間
校長室の中は沈黙が続いていた。

しばらくすると


コンコン


美姫『失礼します。』


ドアをノックして美姫が入ってきた。


…意外と落ち着いてるな。

もっと動揺してると思ってたんだけど…


校長『急に呼び出して悪かったね。
少し聞きたい事があるんだがいいかね?』


さっきと同じように話す校長。


美姫『はい。いいですよ。』


慣れない敬語を話し
いつもの笑顔とは違う…
「営業スマイル」で答える美姫。


校長『実はね…』


と俺に話したことをそのまま美姫に話す校長。


校長『…で紺野先生は違うと言っているんだが…どうなのかな?』


美姫の表情をチラッとみてみるが
あまり表情が変わらない。

いつもコロコロ表情が変わる美姫の表情が
変わらないなんて…

珍しい。


美姫『紺野先生の言うとおりですよ。』


ニコッと微笑みながら淡々と答える美姫。


それからも校長から色々聞かれ
その度に冷静に答えてた美姫が
校長の疑いを一気に減らした一言が


『わたし…付き合ってる人いるので。』


だった。




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