星に願いを~たくさんの幸せをありがとう~



~拓真 side~



『…うまくいくといいな。』


みんなが出ていくと美姫は小声でそう呟いた。


???


「うまくいくといいな。」って…


拓真『なにが?』

美姫『そっか拓真知らないよね。』


そう言うと美姫は俺の傍に来て


美姫『実はね…』


と耳元で夏妃が山瀬の事を好きだということを
話してくれた。

最初は美姫の体が…

声が近くて話に集中できなかった。

でも夏妃の事を聞いて我に返った。


拓真『え?まじで?』


コクコク頷く美姫。


拓真『でも夏妃は山瀬みたいな奴嫌いじゃなかったっけ?』

美姫『まぁそうなんだけど…俊は違うよ。』


なんで違うってわかるんだよ。


美姫『見た目は確かにチャラくて軽そうだけど
ほんとは礼儀正しくて誠実な人だよ。』


だから

拓真『なんでそんなのわかんの?』

美姫『なんでって…これでも一応付き合ってたからね~。』


なんだよそれ。

付き合ってたって…

脅されて無理やりだろ?

なのになんで…


美姫『俊のそういうとこ知ったの別れてからだけどね。』


そういえば…


拓真『なんで山瀬の事「俊」って呼んでんの?』

最近山瀬も美姫のこと呼び捨てだし…


美姫『名前で呼んでって言われたから。』


さらっと答える美姫。

いや…俺が聞きたいのはそういうんじゃないんだよ。


美姫『…ごめんね。』


美姫がいきなり謝ってきた。


拓真『なんで謝んの?』


謝るような事してないよな?


美姫『だって…拓真だけここに残しちゃったから…』


申し訳なさそうに話す美姫。

でも俺からしたら好きな子と2人きりになれて嬉しいから謝る必要なんてないんだけど。


拓真『別にいいよ。
…ところで美姫さん?
夏休みの宿題はどんな感じですか?』


さっき柊に言われた時の美姫の反応で終わってないのはわかったけど
反応がおもしろそうだからわざとそう言った。


美姫『……あともうちょっと。』


…この反応は…

全然もうちょっとじゃないな。


拓真『へー…見せて?』

美姫『………ん。』


ノートを渡され見てみると

これは…

かなり残ってるな。


でも残り一週間あれば大丈夫かな。

よし。


拓真『さて…やりますか。美姫さん。』

美姫『…はーい。』


渋々ノートを開き勉強開始。


てか…

拓真『入院中暇なんだからやればいいのに。』

夏休み中ずっと入院でやる時間はたくさんあったんだから。


美姫『だってさー…英語多いし難しそうだったんだもん。』


美姫は英語苦手だから俺たちより多く出されたのか。

確か英語は…蒔田先生か。


美姫『蒔田先生ひどいんだよ!

「入院中暇でしょうから特別に美姫さん専用の作ったのでやってくださいね。」

って!』


あの先生ならやりそうだな。


美姫『夏妃か柊に頼んどけばよかったな。』


ブツブツ文句を言いながらシャーペンをクルクル回してる。


この流れは…

美姫に英語を教えるチャンス。


拓真『…教えようか?』


美姫『え!?いいの?得意じゃないよね?』


そうだよ。

得意じゃないから
教えられるようにしたんだ。


拓真『大丈夫。』


夏妃と柊に教えてもらったことを思い出して

俺なりにわかりやすく教えた。


美姫『…できた!教え方うまいね。』


2人に教えてもらった方法を美姫にしたら
簡単に理解してくれた。

さすがいつもあの詩織をみてるだけあって教え方がうまい。

あいつらに頼んでよかった。

感謝しないと。


そういえば…


拓真『検査結果…数値どうだった?』


さっき「大丈夫」って言ってたけど…

なんか怪しいんだよな。

最近も体調悪いこと多いから
結果もよくはないと思うんだけど…

まぁほんとにいいなら
それに越したことはないけど。


美姫『え?大丈夫だよ?』


笑顔で言ってるけどなんかぎこちない。


拓真『ほんとに?』

美姫『……うん。』


ほら。やっぱ怪しい。

ほんとにいい時は聞く前に自分から言ってくる。


拓真『…まぁいいや。
親父に聞けばわかるし。』

美姫『え!?なんで?』

拓真『大丈夫なら別にいいだろ?』

美姫『……そうだけど…』


聞かれたくなさそうな様子。

聞かれたくないってことは…

やっぱそういうことか。


拓真『この話はもういいから
ほら、勉強。』


しばらく勉強して

そろそろ夕食が配られる頃―



♬♪。.:*・゜♬

ケータイがなり画面には

「親父」。

親父?

なんだろ?

とりあえず電話に出てみると


五十嵐先生『拓真?今どこ?』

拓真『美姫んとこ。』

五十嵐先生『ちょうどよかった。
俺今から帰るからこっち来な?
社員用駐車場にいるから。』


ほんとはまだ美姫といたいけど…

そろそろ帰らないとって思ってたし…


拓真『わかった。今から行くから待ってて。』


電話を切り美姫に別れを言い親父のもとへ向かった。


五十嵐先生『おかえり。』

拓真『ただいま。…あのさ』


車に乗るなり美姫の検査結果について聞いてみた。

すると


五十嵐先生『いいとは言えないな。
少しだけど悪化してる。』


やっぱそうか…


拓真『退院は?学校行けんの?』


美姫…学校行くの楽しみにしてたから…


五十嵐先生『退院できるし学校も行けるよ。
外来と薬を増やす条件つきでね。
…本当は入院しててもらいたかったけど美姫ちゃんがね~…』


苦笑いしながら話してくれた。


五十嵐先生『…で拓真に美姫ちゃんの事頼んでもいいかな?』

拓真『もちろん。』


今までだってそうしてきたし

頼まれなくてもそのつもり。


五十嵐先生『ありがとう。
まぁ…美姫ちゃんもこどもじゃないから
そんなには心配してないけど…一応ね。』


空が夕焼けのオレンジから暗くなり始めている
空の下を走りそんな話をした。


それからの一週間

毎日美姫のところへ行き1つ1つ夏休みの宿題を終わらせていった。

夏妃と柊も

詩織と俊に教えるのに忙しいらしく

ほとんど会えなかった。


夏休み最終日になんとか全部終わらせ

美姫も無事に退院し


長かった夏休みが終わり


とうとう明日から2学期が始まる。







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