多重人格者【完結】
「…嫌だ」

「はあ?」



何なの?こいつ。


アタシが眉を顰めると、草野は俯いていた顔を上げる。



「俺はあやめが好きだ」

「で?」

「あやめを返して欲しい」

「何で?」

「俺があやめに会いたいから」

「意味不明。理解不能」

「あやめ!」


ぐいっと腕を引っ張ると、草野はアタシに顔を近付ける。
そのまま唇へと自分の唇を重ねた。

アタシはそれに目を見開く。



すぐに草野の顔を思いっきりぶん殴ると、草野は後ろへと吹っ飛んだ。



草野は殴られた頬を抑えながら、ニヤっと笑う。



「初めて動揺したな?」


嬉しそうにそう言う草野に、苛立ちが募っていく。
蹴りを入れようと、構えた。




――――その時だ。
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