多重人格者【完結】


「お父さんもどれだけ心配してたか!!」

「……」

「あの、あやめのお母さん」


そこに葉月ちゃんが話し出す。
母親は腕を組みながら、まだ興奮冷めやらぬ様子。


「…今日も、泊まって貰うの、ダメですか?」

「えっ?」

「実は、昨日泊まって貰ったのはうちの両親が出かけてるからなんです。
ちょっと夜、一人で怖くって」


スラスラと嘘が出る葉月ちゃんを見つめる。
女って怖っ、なんて考えていた。


「いや、でも…ねぇ」


あやめの母親は言葉に詰まっている。
それに畳みかける様に葉月ちゃんが頭を下げた。


「お願いしますっっ!無理を承知で言ってるのはわかってます!」

「…そこまで言うなら、今日だけ…。
あやめ、明日にはちゃんと帰って来るのよ?」

「うん、ありがとう、お母さん」


どうやら、まとまったみたいだ。

俺は壁にもたれかかると、ホッと安堵の息を漏らした。
それから数分経って、あやめは着替えとかの荷物を持って来ると母親と言葉を交わしていた。
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