多重人格者【完結】
そっと私の頬に手を当てる。
それに大袈裟に体が反応した。

びくっとなった私を見て、殺樹は一瞬目を見開いたけど、すぐにクスクスと笑い出す。


≪……前に言ったよね?俺はお前を救いに来た、と≫

「……」


私は静かに一度、コクンと頷く。
確かに、それは聞いた。

実際、心君と会わない様に呼びかけてくれた。



≪なあ?ここにいたら…何も考えずに済む。
退屈だったら、俺が何か話をしてやる。
寂しかったら、俺が抱き締めてやる。
そうして≫



すべすべで陶器の様な肌を見つめながら、私は呼吸をするのも忘れて殺樹の言葉に耳を傾ける。
くっと一度笑うと、殺樹は続けた。
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