サクラと密月
ラブゲーム
新幹線が東京駅を出たのは、日が傾きかけた午後5時頃だった。
さっき未羽には、待ち合わせの時間には間に合いそうもないとメールした。
仕事で彼女とのデートを断ったのは、これで何度目になるだろう。
西日がホームを赤く染め初めている。
新幹線の中は同じ様なビジネスマンで一杯だった。
金曜の夕方なので、観光目的らしい人、二人で出かける
恋人達もいた。
未羽との出会いは、去年の新人セミナーでのことだった。
そのセミナーは、大手の食品会社や物流業、金融業など様々な企業の新人ばかりを集め、
一つのプロジェクトを皆で進めるというものだった。
その中で彼女だけは少し違っていた。
恐らくは将来、自分だけはこんな仕事がしたいという野心を持つものばかりの集まりで、
彼女は人を見て仕事を進める。
誰かのサポートになることにあまり抵抗のないその姿は、自分が今まで見てきた女性の中に
見掛けないタイプだった。
自分の世界の知り合いの女性逹は、女というには自己主張が強く、その主張を絶対まげない。
さっきまで一緒にいた蘭がそうだ。
彼女は俺の元彼女だ。