サクラと密月
風に乗って



いつもの様にスマホのアラームが鳴った。


朝の6時。


窓の外はほのかに明るくなっていた。


昨日の夜のお酒が、体を起こすのを阻止しようとしているのが分かる。


定期的に二日酔いの気持ち悪さが襲ってくるからだ。


以前結婚退職した先輩が言っていたっけ。


二日酔いの気持ち悪さの中で仕事したら一人前だって。


女性が見ても格好いい先輩で、皆の憧れだった。


その先輩が連れてきたのが、年配の頭の薄くなった現場の男性だった。


どんな素敵な人が現れるかと思っていたから、皆言葉を失っていたっけ。




私はあれから皆に内緒で先輩の家に遊びにいっている。


栄から少し東にいった所が先輩のSWeet Homeだ。


お邪魔かなと思ったのだが、結婚前も遊んでもらっていたこともあって


なんとなく新居に遊びにいってしまう。



仕事帰りの夕方。


今まで先輩は会社ではパンツスタイルで決めていたのに、チャイムを鳴らすと


ザックリと編んだセーターにジーンズの姿、カフェエプロンなんか巻いて出てくる。


大体ノーメークだ。


髪もショートで、女性らしさがないのに、でも何故か色っぽかった。


幸せってそういうこと?


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