サクラと密月
彼が新入社員として始めて配属された時のこと。
彼は今まで来た大卒の新入社員と違って、誰に対しても真摯に対応してくれた。
女子社員なんて眼中にない、出世ばかりを望む社員たちと少し違っていた。
大卒の新入社員って案外指導しにくい。
プライドばかり高くって、間違いなんて絶対聞かない。
女子社員が指摘したって女子社員だろ、お前。
なんてヤツゴロゴロいる。
そのくせ上司に弱いから、自分の間違い女子社員のせいにしたりするんだよね。
彼は絶対そんなことしなかった。
変に気をまわして、物をくれる人もいる。
彼はそんなことあまりなかった。
でも、女性社員だからって、見下すことは絶対なかった。
ちゃんと対等でいてくれた。
だから女子社員にモテるのだ。
彼とならお互いを思いやる家庭生活が送れそうだった。
人生ってなかなか思い通りにならないよね。
真剣に思っていたから例の彼女にも意地悪をした。
人生って真剣勝負。きれいごと言ってたら、幸せなんて逃げていってしまうのだ。
でもそれぐらい、彼のこと真剣に欲しかった。
誰にも渡したくなかった。
本当だよ。
でも、今となってはそんな自分の考え方少し惨めかなって思う。
そんな世界で私生きていたんだなと改めて思った。
なんだか少し先輩の気持ち分かった。
そうゆうのもう要らない。
もう欲しくない。
多分圭介くんのお蔭だ。
真剣に答えてくれた彼。
だから私も救われたのだ。