サクラと密月



彼が新入社員として始めて配属された時のこと。


彼は今まで来た大卒の新入社員と違って、誰に対しても真摯に対応してくれた。



女子社員なんて眼中にない、出世ばかりを望む社員たちと少し違っていた。


大卒の新入社員って案外指導しにくい。


プライドばかり高くって、間違いなんて絶対聞かない。


女子社員が指摘したって女子社員だろ、お前。


なんてヤツゴロゴロいる。


そのくせ上司に弱いから、自分の間違い女子社員のせいにしたりするんだよね。


 
 彼は絶対そんなことしなかった。


 変に気をまわして、物をくれる人もいる。
 

 彼はそんなことあまりなかった。
 

 でも、女性社員だからって、見下すことは絶対なかった。
 

 ちゃんと対等でいてくれた。



だから女子社員にモテるのだ。


彼とならお互いを思いやる家庭生活が送れそうだった。

 



人生ってなかなか思い通りにならないよね。


真剣に思っていたから例の彼女にも意地悪をした。


人生って真剣勝負。きれいごと言ってたら、幸せなんて逃げていってしまうのだ。


 でもそれぐらい、彼のこと真剣に欲しかった。
 

 誰にも渡したくなかった。
 
 
 本当だよ。



 でも、今となってはそんな自分の考え方少し惨めかなって思う。


そんな世界で私生きていたんだなと改めて思った。




なんだか少し先輩の気持ち分かった。
 

 そうゆうのもう要らない。
 

 もう欲しくない。



多分圭介くんのお蔭だ。


 真剣に答えてくれた彼。


 だから私も救われたのだ。



< 82 / 147 >

この作品をシェア

pagetop