サクラと密月


あんな風に素直に正直に生きてみたくなった。



私は一体今まで何を見てきたんだろう。



圭介くんを心配して、何度もスマホを確認する。


けれど最新のメールは全くなかった。


そうして一日が過ぎた。



お昼を一緒に食べた彼女が、定時になって私の机に急いでやって来た。


「圭介さん会社休んだって聞きました。大丈夫なんですかね。」



そう真剣に私に聞く。


本当だよね、大丈夫かな。そう彼女と話す。


「お見舞いとか行かなくて良いんですか?」


それは彼女じゃないから駄目でしょ。


そう言いたかったけど何も言わなかった。


 どうせ少ししたら、ばれちゃうんだから少しくらい嘘ついてもいいよね。


 嘘の中でくらいいい思いしたかったんだ。嘘でも。


ああ、こんな日は女の子とカラオケ行くのが最高かも。


失恋ソング一杯歌ったら、きっと忘れられる。


「ねえ、今日今から一緒にカラオケ行かない?」


ネイルサロンに予約かえてもらおう。


彼女はそう聞くと、瞳をキラキラさせて頷いた。


なんかいいな。


楽しそうだ。


部長はほっておこう。


たまには良い薬だ。


もし脅してきたらこちらだって負けてなんかない。


今度こそ良い男見つけてやる。


歌って忘れたら、今度こそ本当の彼氏見つけてやる。



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