サクラと密月
やがて道は行き止まりになった。
その向こう海があった。
暗い海の向こうに建物が見えて、その上にいくつもの花火が上がった。
二人で花火を見上げた。
彼女が不意に俺の手を握る手に力を込めた。
「綺麗。」
彼女の瞳が輝いて花火を見つめている。
嬉しそうなその表情に俺は釘づけになる。
言葉もなく彼女を見つめた。
返事がなかったせいか、彼女が俺を見上げた。
俺は何も言わず、彼女の腕を引きよせると抱きしめた。
俺の腕の中に彼女がいる。
もう離したくはない。
彼女の顔に顔を近づけた。
彼女も何も言わず、俺を受け入れてくれた。
夏の時とは違う。
秋の花火。
唇を離し、こうつぶやいた。
「俺、あなたが好きです、もうずっと前から。」
彼女は何も言わず、俺にギュッと抱きついた。