狡い年下に絆されて
営業もなく、外部との接触も極めて少ない部所だからできる赤みがかった明るい茶髪に、スーツの隙間から覗く深緑のカーディガン。
季節を意識したアーガイル柄のネクタイ。
腕に紺色のトレンチコートらしきものをかけている。
顔も良いし、スタイルもいいし、女子がほっとく訳がない。
「わっこ先輩、ご飯行きましょうよ」
「……人の話聞いてた?」
「用事は付き合いますから、ね?」
「いやいやいや」
なに涼しい顔して着いてきてんだこの野郎。
「今の時期すぐに暗くなっちゃいますし、家も近いんだから送らせて下さいよ……前みたいに、」
その含んだような言い方に、思わず20センチ以上高いであろうそいつの顔を見上げた。
「やっと、目が合った」
チカチカ、明るいLEDで飾られた並木が続く大通り。
逆光で少しだけ影になった、少しだけ傷ついてるような表情(カオ)。
「和子(ワコ)さん、」
いけない、これは、とてもいけない。
「悪いけど、もう着いてこないで」