君は僕を好きになる。


「何そんなに泣いてんの?」

知っているくせに。

首を振る私を、素知らぬ振りでクスッと笑い、いらないと断った缶コーヒーを開けて口に含む。

その様子をボーっと見つめる私に言ったんだ。


「簡単な涙の止め方、教えてやろうか?」

「え?」


本当に一瞬だった。

背にした棚がドンッと音を立て、滑り落ちたコピー用紙がハラハラと舞う。


「――んんっ!」

顔のすぐ横に付かれた相模の手がそのまま頬に触れ、詰め寄られた距離に戸惑う隙さえ与えられず、唇を奪われた。


「……やめて!!」

力いっぱい胸を押し返すと、相模は意外にあっさりその体を離し、睨み上げる私を、悪びれるどころか挑戦的に見下ろして言った。


「ほら、止まった」


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