でも、好きなんです。
結局、千春が見つけてくれたそのワンピースと、へプラムのブラウスを買って、店を出た。

 その後、靴屋ではブーティを買って、小物屋でリボンの形のバレッタを買って、ついでにバックも買ってしまった。
 

ようやく喫茶店で一息ついた頃には、時刻は夕方四時を回っていて、本当にあっという間の一日だった。


喫茶店に入ると、ホットチョコレートを飲みながら、二人の話を聞いた。

茉莉の彼氏は、同じ課で五つ上の先輩の悠一さん。

一見恐そうに見えるけど、兄貴肌で、とても親切な人。

一度会社のイベントで、少しだけ話したことがある。

五つ上だから、年齢は三十。結婚の話も、ちょくちょく出てるみたい。


「でもね~、私は、結婚とかまだ考えられないっていうか、まだもう少し遊びたいしさ~。」


 茉莉はそう言うけれど、その表情はまんざらでもなさそう。

 いいなあ、結婚秒読みか。内心、こっそり落ち込んでしまう私。

 彼氏もいないどころか、妻子持ちの課長に片想い中、それも、上手くいきそうにない、私。


「え~、でも、結婚いいじゃん。うちは逆に、そんな話、全然ないよ。」


 千春の彼氏は学生時代の同級生。大学にいた頃は、なんとも思ってなかったらしいけど、働き始めて数年して再開したら、恋が芽生えてしまったらしい。

 まだ付き合い始めて三カ月。


「そんな話、全然ない割に、結構亭主関白でさ、独り暮らしの部屋とか、私に掃除させて、当たり前って顔してるんだよ~?」

「それはだって、千春の彼氏はイケメンでいかにもモテそうだもん。

モテる男ってのは調子のってて、女の子なんかたくさん寄ってくるからさあ、俺様になっちゃうんだよ。」

「え~、そんなことはないと思うけど・・・。」

「うちの彼はさ、大きい顔してるけど、実はあまり女性経験がないから、なんでも言うこと聞いてくれちゃうよ。

料理だって、いつも向こうがしてくれるし、デートで行く場所なんか、いつも下調べしてあるし。」


 そう言って、茉莉がケーキをつつく。


「そうなんだ~。いいなあ。」


 おっとりしている千春は、茉莉の彼氏自慢にも、嫌な顔ひとつしない。
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