S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~

甘くない壁ドン

大人になってから本気で怒られることは少ない。
そういう意味で、私は今貴重な経験をしているのかもしれない。

松岡いずみ、社会人一年目。

「オイ、本当に分かってんのか?」

そして。
私を壁際に追い込んで、鬼の形相で睨んでいるこの人は。

佐藤英介。
私の職場の先輩である彼は、私の指導係だ。

彼が怒っている原因は、私が夕方に起こした、新人にありがちな単純なミスで。
見積もりの桁を一桁間違えるという、単純だけど実に痛いやつだ。
そのために、彼は私と一緒に得意先に飛んで行く羽目になり、さらにこんな夜遅くまで謝り倒した上に、嫌みを散々聞かされたのだ。
だから、彼が怒るのも無理はない。

「あれだけ数字は確認しろと前にも言ったはずだ。」

正直に言うと、私がこのミスを犯すのはこれが初めてではない。すでに三度目だ。
だから、彼が怒るのも無理はない。

< 2 / 56 >

この作品をシェア

pagetop