【お題創作SS】1日1章
「春(はる)〜、もうそろそろいいだろー?」

「嫌に決まってんだろーがハゲ!」

「禿げてねーよ!?」

これが他人事だったら多分、なんとも思わないのだろう。

いや、少々半目で声のする方を見つめるだけかもしれない。

男が男に求婚する声なんて。

しかも、されてる側が俺とか有り得ない有り得ない。

「いいじゃんか、10年も我慢したろ?」

「大人になったら結婚してもいいとか10年前の俺は言ってない」

求婚してきてる方は、俺の幼馴染みの一樹(かずき)。

同級生で、大学二年。

同じ大学に通い、上京しているのと、金銭的な問題(お互いに常に金欠)でアパートでシェアハウス(と、俺は言い張る)している状態だ。

「なんでだよ?今こうして一緒に住んでんだから問題ねえだろ?」

「いや、ほんとは別がよかったんだけどね。金がないから仕方なく」

幼稚園の頃からの付き合いで、ただの友達だと思っていたのに何故か10年前、急に告白してきた。

と、いうか、一樹(当時小四)に、

「春、1回でいいとは言わないから○らせて」

と、言われた。(告白ですらなかった)

意味を考えるとか、驚くとかせずにダッシュで逃げた。

ほんと、よく逃げた、俺。

「春、聞いてる?春?」

「なんだよ、うっせえな……」

俺が一樹の方を向くと、抱きしめられた。

「は?」

逃げようと藻掻くが、びくともしない。

こいつ、こんなに力強かったっけ。

「お前は不本意でもな、俺はまだお前といれてすっげえ嬉しいんだよ…」

本当に嬉しそうに言われて、離せ、という言葉を一瞬飲み込んだ。

「ほんと、日本が同性愛許してくれれば無言でも籍入れたのに………」

「離せ、そして半径50m以内に入ってくるな」

それ、アパートから出なきゃいけないんですけど!?と、ぐちゃぐちゃ言う一樹を放置して俺は部屋を出る。

「ほんと、黙ってればかっこいいのに」

無意識に口にしていた言葉に自分で驚き、赤面する。

相当俺もヤバイかもしれない。

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