また、きみの隣で




「……あ、の…、去年の春、ここに来たんです。……その時に、付き合っていた人と…」


「…うん」


岩淵くんは、いつもと変わらない声で相槌を打った。

あたしは、震えそうになる声をどうにか抑えながら、ゆっくりと、話し始めた。




大切なリンの事、大切な思い出、最後の夏、これまでの事……全部、話した。

1つ1つの事を、丁寧に、忘れずにとっておいた想いも、全部、全部……。



「…うん。………うん」



あたしはやっぱり震えていたのかもしれない。視界も滲んでいた。


隣の彼は、あたしを心配するかの様に、ゆっくりと噛み締める様に、相槌を打った。





「………だから、今まで……岩淵くんに、あんな態度……、本当に、ごめんなさい……」


最後の言葉を絞ると同時に、あたしの目から涙が零れた。



……ああ、全部、話し終えてしまった………。リンを忘れて、前に進まなきゃいけないのに……リンの事を言葉にすると、また想いが溢れ出してきそうだった。




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