永遠の果て
 何かを悟ったのか、急に結衣ちゃんは私の腕から手を離し、ソファーに座ってテレビをつけた。

 視線を、母に戻す。
 幾らか、シワが増えたな。髪の毛も、白髪がずいぶん増えた。

「ただいま、母さん」
「おかえり、長旅は疲れたでしょう?今ご飯の支度してるから。詩織は休んでなさい」
「うん…」

 キッチンに戻る母の背中を見送る。小さな、小さな母の背中。
 就職も、結婚も、離婚も、相談なしに勝手に決めて、心配ばかり掛けた。
 あの小さな背中に、これ以上荷物を増やさないようにしなくては。

 小さなため息を一つ吐き、結衣ちゃんの隣に腰掛けた。
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