永遠の果て
 言うなり、彼は目をつぶってベッドに潜り込む。
 どうやら、本気で寝るつもりらしい。
 呆気に取られて、残りのカフェオレを啜る。やっぱり、甘い。

 どうして、私はこの空間にいるのだろう。決して、いるはずのない空間。
 そう思っていても、手は、この恩人への手紙を書き綴っている。

 思っていることを、思っているままに口にしたり、行動できなくなったのは、いつからだろう。
 立ち上がり、乾燥機の方へ向かう。

 確かに、たしかにあの頃は、真っ直ぐに直樹を愛していた気がする。

 用意してあった紙袋に乾いた服を入れ、玄関へと向かう。

 起こさないように扉を開ける。

 青。
 彼の言うとおり、雨は上がり、空には青が広がっている。

 まだ名前を聞いていなかったことを思い出し、手書きの表札を視界に入れた。

 春木……昴。

 荷物を持ち直し、階段を駆け降りた。
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