好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
――…
待ち合わせの時間の10分前にはファミレスに着いた。
そう言えば、このファミレスに来るのは俊と別れて以来だ。
あれ以降は、家族とも友だちとも来てなかったな。
あれから何ヶ月も経ってるわけじゃないのに、どこなかなり久しく感じる。
でも、これからここで待ち合わせしてるのは、その俊で。何か変な感じだ。
おまけに、
「お一人様ですか?」
お店の入り口で店員さんにそう聞かれ、
「後でもう一人来ます」
と伝えると、
「あの、彼氏さんと待ち合わせですよね?」
「え?」
「あ、すみません。彼氏さんとよくいらしてくださってたんで、覚えちゃいました。彼氏さん、もう来てますよ。お席、ご案内します」
「え、え?」
動揺する私をよそに、私よりちょっと年上くらいの店員のお姉さんは、一つに束ねた綺麗な黒髪のロングヘアを揺らしながら私の前を歩いていく。
覚えられてた、か…。まあ、おかしくはないよね。高校生の時からつい最近までよく二人で来てたんだから。この店員さんも、そのころからずっといるし。だから店員さんの名前だって知ってるぞ。鈴木さんだ。
しかし鈴木さん、俊はもう彼氏じゃないんだ。元カレなんだ。まあ、言わないけど。
…けど、俊が先に来てるなんて珍しいな。
決して遅刻魔ってほどでもないけど…自分から誘っといて遅れてくることはしょっちゅうあった。まあ、何時間も遅れてくることはなかったけど、それでも、10分前に到着した私よりも早く来てるなんて、もしかしたら初めてじゃないか?
鈴木さんに案内された席に到着すると、本当に俊が待っていた。
窓際の、一番奥の席。
…これから何の話をするのか分からないけど、多分楽しい話じゃないから、この席でちょっと良かったと思った。
「ご注文がお決まりになったらチャイムでお呼びください」
そう言って去りかけた鈴木さんに、俊が
「あ、コーヒーとオレンジジュースお願いします。料理は後で頼みますから」
と注文した。