好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
「俊がコーヒー飲むなんて珍しいね」

鈴木さんが行った後で、私はポツ、と俊に言った。

私と付き合ってた時は、俊はコーヒーを、全く飲まなかったわけじゃないけど、でもそんなには飲んでなかったはずだ。


「うん。最近、好きになった」

口元に小さく笑みを浮かべながらそう答える俊は、まるで私の知らない人みたいだった。


「あ。てかごめん、章子の分も勝手に注文しちゃったけど。オレンジジュースで良かった?」

「あ、う、うん」

私はいつもファミレスや喫茶店では、大抵オレンジジュースを頼んでいた。
オレンジジュースが特別好き、というわけでもないけど、私はコーヒーが飲めないし、お茶とかよりはジュースがいいから。ジュースの中では、まあ割とオレンジジュースが好きで、とりあえず最初に飲むのはいつもオレンジジュースだった。

別れてからも、それは覚えててくれたんだ。
いや、何年間もいつもそうやってオレンジジュース飲んでたんだから、嫌でも覚えちゃうか。それでも、自分の習慣をそうやって覚えててくれてるのは、嫌な気はしなくて。


それと同時に。
自分は何年間もオレンジジュースを飲んでいるのに、急にコーヒーを注文するようになった俊だけが、成長しているような気もして。


さっきも、俊のことを「まるで知らない人みたい」だと感じたばかりだけど、やっぱり、今日の俊は今までと全然違う気がした。
久し振りに会ったから、とかじゃなくて。
待ち合わせ時間よりかなり前に待っててくれたこともそうだし、コーヒーもそうだけど。
表情とか、雰囲気とか、色々違う気がした。
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